苦しみを生み出す心の世界に三塗という言葉がある。三塗とは、火塗、刀塗、血塗の三つ。
まず、始めの火塗とは、私の心の世界が火で覆われた世界。火とは怒りの心。この人から見たならば、世界に映る人はすべて自分のことを嫌う人たちのように見える。自分なんかいなくなればいい。その方が楽だし安心だ。この人がいても迷惑なだけだ。この世からいなくなってくれたらいいと見える。
実際はそのように相手は見ていないかも知れない。でも、その人の心にはそのように映る。だから、自分も相手なんかいなくなればいいと思う、“あっち行け、出ていけ、消えてなくなれ”と思っている。
いてもいいのは自分の思い通りになる人間だけ、それ以外は自分の世界から出て行って欲しいし、消えてなくなれと思っている。これが火塗の世界。
自分か他人か、そのどちらかしか存在してはいけない世界。自分が存在する為には相手の存在を否定しなければならないし、どうしても存在したいならば、自分の思い通りになれと思っている。
自分の思い通りになる間はこの人好きと思って近づくが、一度でも思い通りにならなかったならば、手のひらを返したように、敵意を見せ、怒りをぶつける。そして、相手が負けを認めて、自分の言いなりになるまで、それは止まらない。これが火塗という世界なのである。
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