現実と向き合う為にはどうしたらいいのですか？

問　現実と向き合う為にはどうしたらいいのですか？
答　現実と向き合う為には、まず、この方が向き合うべき現実とは何かを知る必要があります。この方は借金を抱えているので、借金と向き合うことが現実と向き合うことになるのでしょうか。
いえ、そうではありません。この質問をされている方はもともと借金を抱えてはいませんでした。しかし、自分の夢を追いかける為に自分に対する投資だと思ってお金をかけてゆき、最終的には借金を背負うことになってしまったのです。
では、この方はどうして借金を背負うことになってしまったのでしょうか。
それは現実が見えていなかったからです。この方の夢は人の役に立つような仕事がしたい。そういう仕事をすることによって人に喜んでもらえるような人間になりたかった。そう思って夢を追いかけたのです。でも、それがなぜ夢を果たすことができず、借金を抱えることになってしまったのか。
それはこの方が求めている人の役に立つ仕事とは“コツコツと積み上げているものがなければできない仕事”だったのに、それが無いのにやろうとしたからです。だから、当然、失敗したのです。
では、この方が向き合うべき現実とはなんだったのでしょうか。
それは今までやってきたことは何も役には立たなかったという現実です。この方は今までそこそこ色々なことをやって経験を積んで自分には積み上げてきたものがあると思っていた。でも、五十を越え、現実に老いが迫ってきて、今までの人生を振り返ってみたときに、自分は楽してお金を手に入れることばかりで、あまりにも自分が積み上げてきたものがないことが見えてきて、不安になったのです。でも、その現実を認めたくなかったから、自分には積み上げてきたものがあると思って、残りの人生を何かに打ち込んで何か形のあるものを築こうとしたのです。しかし、現実には積み上げたものがなければできない仕事だったので、今の自分にはできない。そこでそれを補うためにお金の力に頼った。でも、結局、上手くいかず、借金を背負うことになってしまったのです。
この方の大きな誤りは小を馬鹿にした為に大を失ったことにあります。
ここで小とは、誰でも出来ること。それに対して、大とは誰も真似の出来ないことです。この方は誰にも真似の出来ない大きなことをしなければ、まわりの人は認めてくれないと思った。だから、誰でも出来ることなんて、自分のやることではない。そんなことはもっと下の人がやったらいいと馬鹿にした。だから、自分のことを必要としている人がやってきたとしたも、その人の為にやろうとはせず、他人にやらせていたのです。でも、今自分にやってきたことは、どんなに小さいことであっても、今の自分のことを必要としてやってきたこと。それを真面目にやることが、今の自分にできる人の役に立つ仕事です。そうやって誰にもできることを馬鹿にせず、コツコツと続けてゆくことによって、信用されて、段々と大きな仕事を任せられるようになります。それを大きな仕事はこういう風にやるのだとやり方を覚えて、他人に語ったとしても、自分が実際に経験して積み上げてきたものでなければ、人の心は動かすことはできません。そういう意味で、知識だけどんなに身につけたとしても、何の意味もないと言えます。この方は知識さえあれば、それに価値があって人はその知識を求めて集まってくると思っていた。だから、色々な所へ行って話を聞き、知識を深めてきたのです。
しかし、現実とぶつかって、もっと大事なことがあると知らされた。だから、知識だけでは何の役にも立たないと感じたのです。これは今までの自分の生き方に対してのこと。この生き方で何十年も生きてきた人ほど、今までの人生は何の役にも立たなかったなんて、認められません。だから、もがいた。それは自分の生き方は間違っていなかったと何とか証明する為に動いたのです。でも、それでは現実を見ていないので何をやっても上手くいかない。それでにっちもさっちも行かなくなって、現実と向き合うしかないなと知らされてきたのです。
自分の人生は何も役には立たなかった、という現実を認めることは苦しいことですが、それを認めて、ゼロから積み上げゆくしか前に進む方法はありません。そうしなければ、何時まで経っても同じ所をぐるぐると回るだけでそこから抜け出すことはできないのです。